「杉の刳り盆と棗の仕覆」
刳り盆とは、一枚の板を、鑿(のみ)で刳(く)って作るお盆の総称ですが、これは古いものではありません。しかも機械で作られたものでしょう。しかし 杉の板目の模様が豪快でした。そこで、このお盆を壁に立て掛け、その前に竹で編んだ、茶箱用の棗の仕覆を置いて見ました。茶箱用の棗は小さく、その仕覆はこれまた可愛く、焦げ茶色の竹の籠目が目立ちます。しかも、お盆の杉の板目の模様と色がピッタリ!。
仕覆の中には小さな瓶をおいて花入れにしました。花はホタルブクロ。あたかも蛍を内包するような花の風情と、棗をやんわりと包む竹の仕覆が、夏のひと時をも包み込みます。
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日本の木工は、刳り物 挽き物 指し物 曲げ物 の4つに大別されます。
刳り物はノミなどで木材の中を刳ったもの、挽き物は木材を回転させ、そこに刃を当てて成型したもの、指し物は木材を組み合わせたもの、曲げ物はスギやヒノキなどの薄板や山桜の樹皮などに熱を加えて器に成型したものを言います。なかでも刳り物と、曲げ物は歴史が古く、金沢市の縄文遺跡・中屋サワ遺跡からは、木を刳って漆を塗ったお椀が出土しています。一方、曲げ物は八戸市の縄文遺跡から出土しました。刳り物も曲げ物も食器を作る為のワザであったことを思うと、食という人間の根源的な欲求に対するこだわりの歴史を感じます。