「蚕の籠と蔓(つる)」
明治期、日本の外貨獲得の大役を担った養蚕業。多くの農家は副業として、この直径90㎝のカゴの中に桑の葉を敷いて蚕を育てました。カゴの目は全て正六角形の為「六つ目籠」とも呼ばれ、軽量で堅牢な造りです。 蚕は自分の体の周囲に口から吐いた絹糸をまとわせて繭をつくります。そこでこの蚕のカゴには秋の蔓をまとわせてみました。
etc. 六つ目籠
竹を割ってこの「六つ目籠」を編み上げる技術は、ずいぶん昔から日本にあったようです。白洲正子さんはご自身の所蔵品の写真集の中で、天平時代、仏教の「散華」という儀式で、僧侶が花びらを撒く時に、その花びらを入れる「華籠」(けこ)と呼ばれるカゴを紹介していましたが、この蚕のカゴと全く同じ「六つ目籠」でした。
私たちの日常にある、カゴやザルという竹製の入れ物への先人たちの技術や思いが、現代にまで続いてることを知るよすがとなります。
etc. 養蚕
長野県の県民歌の三番に「〽しかのみならず 桑とりて 蚕(こ)飼いの業(わざ)の 打ちひらけ 細きよすがも 軽からぬ 国の命を 繋(つな)ぐなり」という歌詞があります。
意味は「そればかりでなく、(長野県民は)桑を摘んできて蚕を飼うという養蚕技術を身に付けて拡大させた結果、蚕の吐く絹糸は細いけれども国の命をつなぐほどの重要な産業となっている。と誇らしげに歌っています。
養蚕というまさに国を担った産業で活躍したカゴからも歴史を感じ取ることができます。